2013年9月26日木曜日

新しいブログのご案内

しばらく仕事などで忙しく放置状態になっていましたが、その間、食の専門家であるフードアナリストの資格を取得し、先日、ブログ「健康の科学(フード編)」を立ち上げました。抗酸化物質、ポリフェノールなどを含めて食を中心に健康に役立つような情報を取り上げていきます。興味がありましたら、訪問をよろしくお願いします。
http://ameblo.jp/kenkaga/

2011年7月31日日曜日

日常的にできる放射線対策: 放射線の影響を減らす

日常的にできる放射線対策、4番目の「放射性物質の発する放射線の影響を減らす」について、最後に紹介します。

これについて効果のあるものは、結論から言って、ずばり「抗酸化物質」です。
この言葉、マスコミでも時々とりあげられるので、聞いた事のある人も少なくないと思います。
放射線の発がんの仕組みのところで述べましたが、放射線を浴びると、体内の水(人の体は約60%が水分)が分解されて活性酸素が生じ、この活性酸素がDNAや細胞壁を攻撃して傷つけます。ということは、この活性酸素を消去する物質、つまり抗酸化物質なら、放射線の人体への影響を減らす事ができるのでは?と思いつきました。
実際に、ロシアの学者からチェルノブイリの体験を経たアドバイスとして「発がん予防として、抗酸化物質も役に立つでしょう。抗発がん効果の他、被曝による加速的老化からも保護します」と指摘されています。
(参考)現代化学 2011年5月号 p.38
http://www.bioweb.ne.jp/content/gendai/gendai1105.html

抗酸化物質としては、ビタミンC,E、カロチン、ポリフェノールなど色々なものが挙げられます。具体的にどんな食品がよいかについては、要望があれば、追々紹介します。

2011年7月26日火曜日

カリウムの豆知識2: 重要な健康効果

相変わらず、マスコミは「基準値の●倍、○○ベクレルの放射性セシウムが検出!」と言って大騒ぎしていますが、このような数字に踊らされるのではなく、前回述べたように、どれだけ食べたら何mSVになるのか?と考える事と、日常生活でできる対策を続ける事が大切だと思います。繰り返しになりますが、基本は以下の4つです。

1.放射性物質の体内への取り込みを減らす
2.放射性物質の体外への排出を促進する
3.放射性物質が細胞内に蓄積するのを防ぐ
4.放射性物質の発する放射線の影響を減らす

以前に述べたように、「3.放射性物質が細胞内に蓄積するのを防ぐ」のに効果があるのがカリウムですが、この効果以外にも重要な健康効果がたくさんあります。
特に重要なのが、カリウムには細胞内のナトリウム(塩分)を排出する働きがある事です。ナトリウムは高血圧の原因として広く知られていますが、近年の研究によると、ある種のがんの原因にもなっていると指摘されています。したがって、カリウムを摂取する事で、高血圧やがんの原因であるナトリウムの排出が促され、高血圧やがんを予防・改善する効果が期待できます。
さらに、カリウムは筋肉のエネルギー代謝を助け、心臓の筋肉の正常な活動にも深く関わっています。よって、カリウムが不足すると心筋梗塞など様々な異常も起こりやすくなってきます。

以上のように、セシウム対策としてだけでなく、カリウムは健康の維持にきわめて重要な役割を持っていますので、カリウムを含む食品の摂取はとても大切です。特に夏は熱中症対策として塩分(ナトリウム)の摂取が増えがちなので、カリウムの積極的な摂取はお勧めです。
カリウムは1日2.5~3gの摂取が推奨されており、野菜、果物、豆類、芋類、海草などに豊富に含まれています。例えば、りんご、バナナ、ジャガイモ、大豆、小豆など。

(参考)がん予防・再発防止のための栄養学
http://www.npo-gancon.jp/rigi/eiyogaku.html

2011年7月19日火曜日

マスコミが大騒ぎの牛肉は安全か危険か?

最近、全国各地で基準値を超えた放射性セシウム含有の牛肉が見つかったといってマスコミが大騒ぎしていますね。例によって、「基準の●倍を超える○○ベクレル検出!!」といって、不安を煽るような報道ばかりしているため、このままでは国産牛肉に大きなダメージが生じるのではないかと危惧しています。

神奈川のお茶の時のように、今回の牛肉中の放射線量がどの程度のものが科学的に検証してみます。最大で牛肉一キログラム当たり3400ベクレル(3400Bq/kg)検出されたということですので、これをお茶の時と同様に、ベクレルからシーベルトへ変換します。この肉一キロを人体に取り込んだ時の影響は、3400Bq×0.000013=0.044mSVとなります。


仮に、この肉一キロを一ヶ月間(30日)毎日食べると、0.044mSV*30日=1.3mSVとなり、平時の年間許容量1mSVを超えてしまいますので単純に安全とは言い切れなくなります。しかしながら、一キロを1~2回食べたくらいでは0.044~0.088mSV程度にしかなりませんので、すでに食べてしまった場合でも危険はないと言えます。念のため、子供は食べるのを控えた方がよいですが、大人は長期間にわたってドカ食いしない限り、全く問題ないと思います。


ところで、最近はやたらと”内部被曝が(微量でも)怖い”、という報道が目立ちます。確かに外部被曝より内部被曝の方が怖いのは事実ですが、これも被曝量によって危険度は全く違ってきます。マスコミはあまり取り上げていないようですが、実は私たちは原発事故の前から、普段食べている食品などから常に放射性物質を取り込んで内部被曝しています。
特に、人体にとって必須のカリウムは少量の放射性カリウムを含んでいます。したがって、これが体内で放射線を出すため、成人は年間で約0.3mSV内部被曝していると言われています。もし、この程度の量の内部被曝でも怖いというのであれば、カリウムを豊富に含む健康食品(りんご、豆類、イモ類など)も食べられなくなってしまいます。その結果生じるカリウム不足の方が、健康にとって恐ろしい結果になります。


結論としては、内部被曝の怖さも被曝量によって変わってくるため、どの程度の量を被曝したのか計算すればむやみやたらに不安になることはありません。それでも心配なら、先に紹介したような、放射性物質の体外への排出を促す工夫を色々実践すればよいでしょう。ちなみに、今回マスコミが基準値を超えたと大騒ぎしている牛肉も、一キログラムを7日間食べ続けてやっと、普段、体内の放射性カリウムから被曝している量と同じくらいになります(0.044mSV*7日=0.31mSV)



2011年7月13日水曜日

日常的にできる放射線対策: 体外への排出3

放射性物質の体外への排出に、食物繊維のペクチンやアルギン酸が有効であると先に述べましたが、実は食物繊維だけでは不十分です。これがいくら放射性物質を餅のように絡め取ってくれても、腸の調子が悪くて、便が腸内にため込まれて固まった状態、つまり便秘状態になっていると、体外へ排出されず腸内に長く留まってしまいます。日頃から便秘がちな人は、これを改善させる必要があります。

食物繊維以外で重要なのは、まず便を軟らかくするのに必要な水分。特に夏は脱水状態になりやすいので、こまめに補給する必要があります。
あとは、腸の働きをよくして排出運動を活発にさせる事が必要なのですが、これに必要な成分は非常に多くあります。例えば、酢酸などの有機酸、果糖、ビタミン類、オリゴ糖などです。この中で特に重要なのはビタミン類だといわれています。ビタミン類は便秘解消以外にも健康維持に大変重要な役割を果たしていますので、別の機会にまた取り上げたいと思います。

2011年7月7日木曜日

日常的にできる放射線対策: 体外への排出2

食物繊維の一つであるペクチンが、放射性物質の体外への排出に有効であると先に述べました。少し補足すると、食物繊維には不溶性と水溶性の2種類があり、ペクチンは水溶性食物繊維です(水に溶けやすい性質で、便を軟らかくする働きがあります)。

では、他の水溶性食物繊維でも効果あるのでは?と思いつきました。そこで、ちょっと調べてみたら、水溶性食物繊維の一つであるアルギン酸も放射性物質の体外への排出に有効である事がわかりました。消化管内に取り込まれた放射性ストロンチウムの体外排出に関する研究が多数行われ、人への実験でも顕著な効果が認められています。例えば、アルギン酸ナトリウムを摂取してからストロンチウムを飲むと、体内残留率が1/8に激減すると報告されています。これまでの所、放射性ストロンチウムの検出は報道されていないみたいですが、これは体内に入ると骨にたまりやすいというやっかいな性質があります。しかし、アルギン酸を日常的に摂取しておくことで、ストロンチウムの体内取り込みを低減させられる可能性がありますので、予防策としてお勧めできます。セシウムの除去率ははっきりしませんでしたが、効果はあると思います。

アルギン酸は、わかめなどのヌルヌルした粘り成分で、これがペクチンと同様に、セシウム等のイオン性物質を餅のように絡め取って体外へ排出しやすい状態にしてくれるのだと思います。わかめ以外に、昆布やひじきなどに多く含まれています。

2011年7月5日火曜日

日常的にできる放射線対策: 体外への排出

食品関係で、日常的にできる放射線対策を改めて考えてみると、主に4つの方法が挙げられます。

1.放射性物質の体内への取り込みを減らす
2.放射性物質の体外への排出を促進する
3.放射性物質が細胞内に蓄積するのを防ぐ
4.放射性物質の発する放射線の影響を減らす

先に紹介した食品調理の工夫は、1番の方法「取り込みを減らす」に相当します。最初に紹介したカリウムの摂取は3番の方法に相当します。今回は、2番の方法「排出を促進する」を紹介します。腸は放射線に対して特に敏感ですから、取り込んだ放射性物質は、なるべく早く腸から排出したいところです。

体外への排出を促進するのに有効な化学物質は食物繊維です。先日、NHK朝の特番でも報道されていたので見た人もいるでしょう。番組中では、食物繊維の一つであるペクチンが有効であると指摘されていました。ペクチンというのは、リンゴなどを使ってジャムを作る時に生じるネバネバした成分です。これが餅の様に、セシウムなどのイオン性物質を絡め取って体外へ排出しやすい状態にしてくれるのだと思います。
実際に、チェルノブイリ後、リンゴ5個分の粉末状ペクチンを毎日摂取した子供たちは、摂取しなかった子供たちに比べて、放射性物質の体外への排出が大幅に促進された(13.9%→63.6%)と番組中では報道されていました。

粉末状ペクチンはすでに一部で買い占めが起こっているみたいですが、わざわざこのようなサプリメントを購入する必要はないと思います。リンゴを皮ごとすり下ろしたり、リンゴジャムを作るのもいいでしょう。ちなみに、リンゴは甘いものより、紅玉のような酸っぱいものの方がペクチンは多く含まれるみたいです。
また、リンゴ以外の果物(ミカン、レモン、イチゴなど)、アズキなどの豆類、オクラなどの野菜類にもペクチンは多く含まれています。
リンゴと比べて具体的にどの程度のペクチン量が含まれるかは、要望があれば、別の機会にでもお知らしようかと思います。

(参考)ジャムの作り方と雑学
http://www16.ocn.ne.jp/~chelsea/jamtukurikata.html