2011年5月14日土曜日

神奈川のお茶は安全か危険か?: ベクレルとシーベルト(2)

福島から遠く離れた神奈川県のお茶葉から、基準値を超える放射性セシウムが検出されたことで、関東の農産物について衝撃と混乱が広がっています。政府や県は「お茶を飲んでも直ちに健康に影響はないが、念のため出荷の自粛を要請した」と、相変わらず安全なのか危険なのかわからない言い方をしています。これでは、「影響ないのになぜ出荷制限するのか?」「今は影響なくても将来危ないのでは?」と不安になりますよね。

ニュースによると、基準値500Bq/kgを超えるセシウムが南足柄市など数カ所で検出されたとのことです(570~780Bq/kg)。しかし、この値だけ見ても、体にどの程度の影響があるのか判断が付きません。そこで、以前に紹介した方法を使って、ベクレルからシーベルトへ変換してみます。

例えば、最も値の高かった小田原市のお茶葉(780Bq/kg)で計算してみます。このお茶葉1kを人体へ取り込んだ時の影響は、780Bq×0.000013=0.010mSVとなります。0.000013という数字は、セシウムに関してベクレルからシーベルトへ変換する係数で、以下から参照しました。
http://search.kankyo-hoshano.go.jp/food2/Yougo/j_senkeisu.html

もし、このお茶を10日体に取り込み続けたとすると、0.010mSV×10日=0.10mSVで、この程度なら安全と言えます。しかし、もしこのお茶を一年取り込み続けたとすると0.010mSV×365日=3.7mSVとなり、お茶だけで体に取り込む放射線量としてはやや多いので、単純に安全とは言い切れなくなってきます。

つまり、「科学的にはお茶を数日飲んだとしても健康に影響はないけど、市場に出ていると長期にわたって飲み続ける人がいるかもしれない。その結果、健康に影響が出てくる可能性はある」、ということになります。
ということで、政府・県の「直ちに健康に影響はないが、念のため出荷の自粛を要請」という方針は間違ってはいないと思います。しかし、一生懸命作った生産者の気持ちを考えると、画一的な出荷自粛ばかりでいいのだろうか?という気はします。例えば、「今回のお茶葉1kgを毎日体に取り込み続けると10日で0.10mSV、1年で3.7mSV(基準値は10日で0.065mSV、1年で2.4mSV)」と表示して、政府の責任において出荷を許可するなど、生産者に配慮した対応も必要なのではないでしょうか。。。

2011年5月10日火曜日

福島の放射線許容量は安全か危険か?

福島の放射線許容量について、20mSV/年という基準を巡っての混乱が広がっています。文部科学省、政府は妥当だと主張し、専門家は賛否両論。挙げ句の果てに、この値では高すぎると言って、内閣参与だった専門家が泣きながら辞任する始末・・・これでは、市民には安全なのか危険なのかさっぱりわからず、混乱するばかりですね。
とりあえず、現時点で信頼できる情報を元にして、考えてみます。重大な原発事故などの緊急事態を想定した場合の数値は、以下のように定まっています。

緊急時: 20~100mSV /年
収束時: 1~20mSV/年   

緊急時であれば20mSVは最も低い値なので、完全に安全なレベルです。しかし、この緊急時の値は、実は、事故発生から1~2週間(長くても1ヶ月)程度に限って適用されるものなので、事故が長期にわたった場合は収束時の値で考えないといけません。すると今度は、20mSVは最も高い値になるので、単純に安全とは言い切れなくなってきます。

ところで、レントゲン技師などの放射線従事者が浴びている放射線は約5mSV/年なので、このレベルまでなら安全と言えます。また、子供は大人より2~3倍放射線の影響を受けやすいと報告されています。
これらの情報を踏まえると、安全を最優先するなら、大人5mSV、子供1~2mSVと設定するのが理想的だと思います。
ただし、ここまで厳しく設定すると、誰も全く外出できなくなって当面の生活に支障が出る恐れはあります。この現実面を考えると、とりあえず20mSV/年と設定するのもあながち間違っているとは言えません。暫定的に設定して理想値まで下げていくという方針も理解できなくはないです。
ただし、上述のように子供は影響を受けやすいので、大人20mSVと設定するのであれば、子供は5~10mSVくらいに設定すべきだと思います。さらに、この値は期限付きで適用し、それを超えても事態が収束せずに放射線量が下がらないのであれば、生活より安全を優先して設定値を下げるか、思い切って子供だけでも学童疎開(?)みたいなことも必要になるかもしれません。

福島の放射能汚染マップによると、国が定めた避難区域以外でも、福島市、二本松市、郡山市を含む一帯の放射線量が結構高く、計算すると15~20mSV/年くらいになるのがわかります。ついで、いわき、白河、会津若松周辺が高く、3.5~4mSV/年くらいになります。
気になるのは、この測定値が地表1mの値であることと、関東の一部に意外と放射線量の高い場所があることです。これについては、後で別にコメントします。