2011年7月31日日曜日

日常的にできる放射線対策: 放射線の影響を減らす

日常的にできる放射線対策、4番目の「放射性物質の発する放射線の影響を減らす」について、最後に紹介します。

これについて効果のあるものは、結論から言って、ずばり「抗酸化物質」です。
この言葉、マスコミでも時々とりあげられるので、聞いた事のある人も少なくないと思います。
放射線の発がんの仕組みのところで述べましたが、放射線を浴びると、体内の水(人の体は約60%が水分)が分解されて活性酸素が生じ、この活性酸素がDNAや細胞壁を攻撃して傷つけます。ということは、この活性酸素を消去する物質、つまり抗酸化物質なら、放射線の人体への影響を減らす事ができるのでは?と思いつきました。
実際に、ロシアの学者からチェルノブイリの体験を経たアドバイスとして「発がん予防として、抗酸化物質も役に立つでしょう。抗発がん効果の他、被曝による加速的老化からも保護します」と指摘されています。
(参考)現代化学 2011年5月号 p.38
http://www.bioweb.ne.jp/content/gendai/gendai1105.html

抗酸化物質としては、ビタミンC,E、カロチン、ポリフェノールなど色々なものが挙げられます。具体的にどんな食品がよいかについては、要望があれば、追々紹介します。

2011年7月26日火曜日

カリウムの豆知識2: 重要な健康効果

相変わらず、マスコミは「基準値の●倍、○○ベクレルの放射性セシウムが検出!」と言って大騒ぎしていますが、このような数字に踊らされるのではなく、前回述べたように、どれだけ食べたら何mSVになるのか?と考える事と、日常生活でできる対策を続ける事が大切だと思います。繰り返しになりますが、基本は以下の4つです。

1.放射性物質の体内への取り込みを減らす
2.放射性物質の体外への排出を促進する
3.放射性物質が細胞内に蓄積するのを防ぐ
4.放射性物質の発する放射線の影響を減らす

以前に述べたように、「3.放射性物質が細胞内に蓄積するのを防ぐ」のに効果があるのがカリウムですが、この効果以外にも重要な健康効果がたくさんあります。
特に重要なのが、カリウムには細胞内のナトリウム(塩分)を排出する働きがある事です。ナトリウムは高血圧の原因として広く知られていますが、近年の研究によると、ある種のがんの原因にもなっていると指摘されています。したがって、カリウムを摂取する事で、高血圧やがんの原因であるナトリウムの排出が促され、高血圧やがんを予防・改善する効果が期待できます。
さらに、カリウムは筋肉のエネルギー代謝を助け、心臓の筋肉の正常な活動にも深く関わっています。よって、カリウムが不足すると心筋梗塞など様々な異常も起こりやすくなってきます。

以上のように、セシウム対策としてだけでなく、カリウムは健康の維持にきわめて重要な役割を持っていますので、カリウムを含む食品の摂取はとても大切です。特に夏は熱中症対策として塩分(ナトリウム)の摂取が増えがちなので、カリウムの積極的な摂取はお勧めです。
カリウムは1日2.5~3gの摂取が推奨されており、野菜、果物、豆類、芋類、海草などに豊富に含まれています。例えば、りんご、バナナ、ジャガイモ、大豆、小豆など。

(参考)がん予防・再発防止のための栄養学
http://www.npo-gancon.jp/rigi/eiyogaku.html

2011年7月19日火曜日

マスコミが大騒ぎの牛肉は安全か危険か?

最近、全国各地で基準値を超えた放射性セシウム含有の牛肉が見つかったといってマスコミが大騒ぎしていますね。例によって、「基準の●倍を超える○○ベクレル検出!!」といって、不安を煽るような報道ばかりしているため、このままでは国産牛肉に大きなダメージが生じるのではないかと危惧しています。

神奈川のお茶の時のように、今回の牛肉中の放射線量がどの程度のものが科学的に検証してみます。最大で牛肉一キログラム当たり3400ベクレル(3400Bq/kg)検出されたということですので、これをお茶の時と同様に、ベクレルからシーベルトへ変換します。この肉一キロを人体に取り込んだ時の影響は、3400Bq×0.000013=0.044mSVとなります。


仮に、この肉一キロを一ヶ月間(30日)毎日食べると、0.044mSV*30日=1.3mSVとなり、平時の年間許容量1mSVを超えてしまいますので単純に安全とは言い切れなくなります。しかしながら、一キロを1~2回食べたくらいでは0.044~0.088mSV程度にしかなりませんので、すでに食べてしまった場合でも危険はないと言えます。念のため、子供は食べるのを控えた方がよいですが、大人は長期間にわたってドカ食いしない限り、全く問題ないと思います。


ところで、最近はやたらと”内部被曝が(微量でも)怖い”、という報道が目立ちます。確かに外部被曝より内部被曝の方が怖いのは事実ですが、これも被曝量によって危険度は全く違ってきます。マスコミはあまり取り上げていないようですが、実は私たちは原発事故の前から、普段食べている食品などから常に放射性物質を取り込んで内部被曝しています。
特に、人体にとって必須のカリウムは少量の放射性カリウムを含んでいます。したがって、これが体内で放射線を出すため、成人は年間で約0.3mSV内部被曝していると言われています。もし、この程度の量の内部被曝でも怖いというのであれば、カリウムを豊富に含む健康食品(りんご、豆類、イモ類など)も食べられなくなってしまいます。その結果生じるカリウム不足の方が、健康にとって恐ろしい結果になります。


結論としては、内部被曝の怖さも被曝量によって変わってくるため、どの程度の量を被曝したのか計算すればむやみやたらに不安になることはありません。それでも心配なら、先に紹介したような、放射性物質の体外への排出を促す工夫を色々実践すればよいでしょう。ちなみに、今回マスコミが基準値を超えたと大騒ぎしている牛肉も、一キログラムを7日間食べ続けてやっと、普段、体内の放射性カリウムから被曝している量と同じくらいになります(0.044mSV*7日=0.31mSV)



2011年7月13日水曜日

日常的にできる放射線対策: 体外への排出3

放射性物質の体外への排出に、食物繊維のペクチンやアルギン酸が有効であると先に述べましたが、実は食物繊維だけでは不十分です。これがいくら放射性物質を餅のように絡め取ってくれても、腸の調子が悪くて、便が腸内にため込まれて固まった状態、つまり便秘状態になっていると、体外へ排出されず腸内に長く留まってしまいます。日頃から便秘がちな人は、これを改善させる必要があります。

食物繊維以外で重要なのは、まず便を軟らかくするのに必要な水分。特に夏は脱水状態になりやすいので、こまめに補給する必要があります。
あとは、腸の働きをよくして排出運動を活発にさせる事が必要なのですが、これに必要な成分は非常に多くあります。例えば、酢酸などの有機酸、果糖、ビタミン類、オリゴ糖などです。この中で特に重要なのはビタミン類だといわれています。ビタミン類は便秘解消以外にも健康維持に大変重要な役割を果たしていますので、別の機会にまた取り上げたいと思います。

2011年7月7日木曜日

日常的にできる放射線対策: 体外への排出2

食物繊維の一つであるペクチンが、放射性物質の体外への排出に有効であると先に述べました。少し補足すると、食物繊維には不溶性と水溶性の2種類があり、ペクチンは水溶性食物繊維です(水に溶けやすい性質で、便を軟らかくする働きがあります)。

では、他の水溶性食物繊維でも効果あるのでは?と思いつきました。そこで、ちょっと調べてみたら、水溶性食物繊維の一つであるアルギン酸も放射性物質の体外への排出に有効である事がわかりました。消化管内に取り込まれた放射性ストロンチウムの体外排出に関する研究が多数行われ、人への実験でも顕著な効果が認められています。例えば、アルギン酸ナトリウムを摂取してからストロンチウムを飲むと、体内残留率が1/8に激減すると報告されています。これまでの所、放射性ストロンチウムの検出は報道されていないみたいですが、これは体内に入ると骨にたまりやすいというやっかいな性質があります。しかし、アルギン酸を日常的に摂取しておくことで、ストロンチウムの体内取り込みを低減させられる可能性がありますので、予防策としてお勧めできます。セシウムの除去率ははっきりしませんでしたが、効果はあると思います。

アルギン酸は、わかめなどのヌルヌルした粘り成分で、これがペクチンと同様に、セシウム等のイオン性物質を餅のように絡め取って体外へ排出しやすい状態にしてくれるのだと思います。わかめ以外に、昆布やひじきなどに多く含まれています。

2011年7月5日火曜日

日常的にできる放射線対策: 体外への排出

食品関係で、日常的にできる放射線対策を改めて考えてみると、主に4つの方法が挙げられます。

1.放射性物質の体内への取り込みを減らす
2.放射性物質の体外への排出を促進する
3.放射性物質が細胞内に蓄積するのを防ぐ
4.放射性物質の発する放射線の影響を減らす

先に紹介した食品調理の工夫は、1番の方法「取り込みを減らす」に相当します。最初に紹介したカリウムの摂取は3番の方法に相当します。今回は、2番の方法「排出を促進する」を紹介します。腸は放射線に対して特に敏感ですから、取り込んだ放射性物質は、なるべく早く腸から排出したいところです。

体外への排出を促進するのに有効な化学物質は食物繊維です。先日、NHK朝の特番でも報道されていたので見た人もいるでしょう。番組中では、食物繊維の一つであるペクチンが有効であると指摘されていました。ペクチンというのは、リンゴなどを使ってジャムを作る時に生じるネバネバした成分です。これが餅の様に、セシウムなどのイオン性物質を絡め取って体外へ排出しやすい状態にしてくれるのだと思います。
実際に、チェルノブイリ後、リンゴ5個分の粉末状ペクチンを毎日摂取した子供たちは、摂取しなかった子供たちに比べて、放射性物質の体外への排出が大幅に促進された(13.9%→63.6%)と番組中では報道されていました。

粉末状ペクチンはすでに一部で買い占めが起こっているみたいですが、わざわざこのようなサプリメントを購入する必要はないと思います。リンゴを皮ごとすり下ろしたり、リンゴジャムを作るのもいいでしょう。ちなみに、リンゴは甘いものより、紅玉のような酸っぱいものの方がペクチンは多く含まれるみたいです。
また、リンゴ以外の果物(ミカン、レモン、イチゴなど)、アズキなどの豆類、オクラなどの野菜類にもペクチンは多く含まれています。
リンゴと比べて具体的にどの程度のペクチン量が含まれるかは、要望があれば、別の機会にでもお知らしようかと思います。

(参考)ジャムの作り方と雑学
http://www16.ocn.ne.jp/~chelsea/jamtukurikata.html

2011年7月2日土曜日

日常的にできる放射線対策: 食品調理の工夫3

前回、野菜や魚の酢漬けが有効だと述べましたが、酢のような酸性物質で効果があるなら、逆に重曹のようなアルカリ性物質でも効果があるのでは?と思いつきました。そこで、ちょっと調べてみたら、やはり、重曹でも効果があるみたいです。

食品調理でよく使われる重曹(食品用タンサン)は、炭酸水素ナトリウムNaHCO3というアルカリ性物質で、これの水溶液にはナトリウムイオンと炭酸水素イオンが含まれています。したがって、セシウム含有食品を重曹水溶液に浸すと、セシウムイオンは炭酸水素イオンにくっつくことで、食品中のセシウムCsイオンは重曹のナトリウムNaイオンに置き換わって、除かれやすくなると思われます。
(化学式で簡単に書くと、Cs-食品 + NaHCO3 → Na-食品 + CsHCO3)

特に山菜類を重曹水溶液でゆでるとアク抜きできますし、豆類を重曹水溶液でゆでると柔らかくなり色が鮮やかになります。したがって、セシウム除去という意味だけでなく、様々な調理効果がありますのでお勧めです。

ちなみに、緑色豆類を重曹水溶液でゆでると色が鮮やかになるのは、緑色成分(葉緑素)中のマグネシウムMgイオンが重曹のナトリウムNaイオンに置き換わるからと言われています。






2011年6月29日水曜日

日常的にできる放射線対策: 食品調理の工夫2

先に食品調理での放射性物質除去では、食品の水洗、食塩水洗浄、さらにゆでる、塩ゆでする、などが有効だと述べました。
調理法としては、野菜や魚の酢漬けなども有効(前回紹介した資料では、除去率30~90%)といわれていますので、今回はこれを科学的に検証します。

酢というのは主成分は酢酸(化学用語で有機酸と呼ばれるものの一つ)で、水素イオンを放出し、自身はマイナスイオンになりやすいという化学的性質を持っています。したがって、セシウムのようなプラスイオンになりやすい物質とはくっつきやすいという性質があります。酢漬けなどにすると、食品中のセシウムが酢酸にくっついて、酢の中に溶け出してくることで、効率的に除去できるのだと思います。ただ、漬けた後の酢にはセシウムが含まれているため、ゆで汁と同様に捨てる必要があります。

日本で酢といえば米酢がよく使われますが、酢酸を同じくらい含む酢(玄米酢、黒酢、リンゴ酢など)でも効果はほとんど同じだと思います。酢酸を多く含む酢(香酢、ブドウ酢など)ならば、もっと効果が高くなるかもしれません。
さらに、酢酸はあまり含まれていなくても、他の有機酸、例えばクエン酸、リンゴ酸などを豊富に含む酢(梅酢、もろみ酢など)でもいいのではないかと思えてきます。酢酸より弱い酸なので、若干効果は落ちるかもしれませんが。

酢漬けを作るのなら、単なる放射線対策としてだけでなく、色々な酢を試して、味の違いを楽しんでみるのもいいのではないでしょうか。

(参考)酢の種類と有効成分の比較
http://www.健康酢.jp/300/ent331.html

2011年6月19日日曜日

日常的にできる放射線対策: 食品調理の工夫

新聞の投書欄で、「日常でできる放射線被曝対策が少ない」という意見があるのを見つけました。そこで、以前に紹介したカリウム摂取以外に、主に食品・サプリメント関係で日常的にできる化学的対策を、思いつくまま紹介していこうと思います。

先日、”食品調理で放射線(正確には放射性物質ですが)を減らす方法”がテレビで放送されていました。NHKニュース9だったので、見た人も少なくないでしょう。今回は、これがどの程度有効か紹介し、科学的に検証してみます。
 番組を要約すると、以下のようになります。
▽野菜などの表面をよく洗い、土がついていれば、それもよく洗い落とす。
▽じゃがいもやにんじんなどの根菜や皮つきの果物は皮をむく。
▽さらにゆでることによって、野菜の中のセシウムが出て行きやすくなる。

以前に述べたように、セシウムはプラスイオンになりやすく、イオンは水に溶けやすいという化学的性質をもっています。ですから、水洗いは食品のセシウムを取り除くのに有効です。さらに、温度が高いと化学物質の水への溶けやすさ(専門用語では溶解度)が上がるので、ゆでるとさらにセシウムを取り除きやすくなるはずです。実際、上図によるとゆでた方が水洗より除去率が上がっています(68%→78%)。ただし、ゆで汁中にはセシウムが含まれているので、これは必ず捨てる必要があります。
また、土はマイナス性なので、プラス性のセシウムは土にくっつきやすいという性質があります。ですから、土の付いた食品の皮をむくというのも、科学的に理にかなっています。
あと、食塩(塩化ナトリウム)水には、ナトリウムイオンと塩化物イオンが含まれているので、単なる水よりセシウムイオンが溶けやすくなるのでは?と思いつきました。そこで、ちょっと調べてみたら、実際に、水洗より食塩水で洗浄した方が放射性物質の除去率は上がるみたいです(食品中の水分を除く効果によるところもあるようですが)。この事実を踏まえると、単にゆでるより、塩ゆでした方が除去効果は高いと思います。

詳細データは下図に示しますので興味のある人は参照してください。

(元ニュース)http://www3.nhk.or.jp/news/tokusetsu2011/0616.html

2011年6月15日水曜日

汚染土壌から空気中の放射性物質濃度を考える

前回、土壌汚染情報を取り上げましたが、汚染土壌から空気中に漂っている放射性物質濃度も気になりますね。急遽、ちょっと調べてみました。

例えば、東京江東区亀戸の土壌のセシウム濃度は3201Bq/kgと報告されていますので、この土壌から空気中に、どれくらいセシウムが漂っているか考えてみます。
約1Bq/kgが100Bq/m2に相当するので、まず3201×100=320100Bq/m2へと変換できます。これを空気中濃度に変換すると、320100Bq/m2×0.000001/m=0.32Bq/m3となるみたいです(0.000001という数字は再浮遊係数というらしく、土中濃度を空気中濃度へ変換するのに使うものです)。

成人1日あたり22.2m3の空気を吸い込むらしいので、空気中濃度0.32Bq/m3のセシウムが漂っている場所で過ごした場合、1日で0.32×22.2=7.1Bq、1年で7.1×365=2592Bq相当のセシウムを吸い込む事になります。最後に、例によってベクレルをシーベルトに変換すると、2592Bq×0.000039mSV/Bq=0.1mSV/年となります。とても小さい値なので、体内への吸い込みによる健康への影響(内部被曝)はほとんど心配ないレベルだと言えます。外部からの影響(日々発表される放射線量)は、これからもチェックした方がいいと思いますが。

2011年6月14日火曜日

最新の土壌汚染地図: 表示単位に注意!

セシウムの化学的対策を書くつもりでしたが、今日、気になる新聞発表がありましたので予定を変更して、これを紹介します。
記事によると、筑波大が、福島県と首都圏東部の土壌汚染地図を独自に作製した結果、原発から200キロ近く離れた茨城県や千葉県の一部の土壌から、通常の400倍にあたる放射性セシウム(40000Bq/m2)が検出されたらしいです。
4万ベクレルは、国が定める「放射線管理区域」(=放射線被ばくの恐れがあり、適正な被ばく管理が必要とされる区域。原子炉建屋や病院のCT検査室など。)の基準と同程度で、健康には影響がないレベルと発表されていますが、これが本当か考えてみます。
まず、”通常の400倍で4万ベクレル”と聞いて、高い値だと感じる人が多いのではないでしょうか。これまでは、多くが数百~千ベクレル検出と報道されてきたので、私も初めは高いと感じました。しかし、よく見てみると単位が違いました。これまでの報道は土1キログラムあたりの放射能(Bq/kg)で、今回は土壌1平方メートルあたりの放射能(Bq/m2)です。つまり、前者は重さで、後者は面積あたりの単位です。
よって、このままでは比較ができないので、Bq/m2をBq/kgに変換する必要があります。土壌面積を重さに変換するのは簡単ではないですが、調べてみたら、100Bq/m2が約1Bq/kgに相当するらしいです。
つまり今回の4万Bq/m2は、約4百Bq/kgに相当する事になります。この値ならこれまでの報道でもよく見る値(ちなみにコメの作付け制限値は5千Bq/kg)で、仮にイモ類などの農産物を作っても平均で4Bq吸い込む可能性がある程度で、ほとんど問題ないレベルである事がわかります。

しかし、相変わらず”通常の○○倍!●●ベクレル検出”と不安を煽るような報道を続けているのは大問題です。誤解や風評被害を生む元なので早急に改善してもらいたいと思います。

2011年6月6日月曜日

セシウムを吸収しやすい水産物

セシウムの化学的対策として、カリウム摂取以外にもう一つ思い浮かびました。これについてはもう少し情報が集まってからコメントします。今回はこれ以外に気になっていたことを述べることにします。

先に、農産物が土壌からセシウムを吸い込み、収穫時に実などの食べられる部分に移る比率(移行係数)を紹介しましたが、新茶でセシウムが検出されるほど土壌が汚染されているのであれば、川や湖も汚染されているのではないかと危惧していました。
そうしたら、やはり福島の川や湖でとれた淡水魚(ワカサギ、アユやヤマメ)から、基準値(500Bq/kg)を超えたセシウムが検出されたらしいです。ニュースによると、主に620~990Bq/kgで新茶の時と同様に深刻なレベルではないですが、中には2900Bq/kgと高濃度で検出されたアユもあったみたいです。

淡水魚は海水魚より体内にナトリウムを取り込みやすいのが原因の一つといわれています。ナトリウムもカリウムと同様にセシウムと化学的性質が似ている(いわゆる同族元素)ので、茶葉の新芽の時と同様に、セシウムを体内にため込んだと思われます。
さらに、海は広く海流などもあって希釈されやすいですが、川や湖などは海に比べると小さく閉じた環境なので蓄積されやすいみたいです。
最も気になるのは原発から約90キロも離れた湖でも基準値を超えたセシウムが検出されたという事実です。距離にかかわらず、特に新茶の時に基準値越えした場所を中心に、関東一帯の川や湖を広範囲にわたって調べる必要があるのではないかと思います。

2011年6月2日木曜日

農産物が土中のセシウムを吸収する比率

先に、「新茶では土中のセシウムを根から吸収して新芽にたまった(濃縮された)。また、天然キノコでもセシウム濃縮効果が認められた」と書きました。

最近公表されたデータで、農作物が土中のセシウムを根から吸収する比率が報告されましたので、参考までに幾つか紹介します。
公表されたのは、野菜や果樹が土壌からセシウムを吸い込み、収穫時に実などの食べられる部分に移る比率(移行係数)です。簡単に言うと、この係数の値が高いほど成長段階で土中からセシウムを多く吸収し、収穫の際、作物の汚染度が高くなる可能性があります。
作物名      移行係数(平均値)
レタス       0.0067
トマト       0.00070
ソラマメ      0.012
ネギ        0.0023
ジャガイモ     0.011
サツマイモ     0.033
リンゴ       0.0010
ブドウ       0.00079

このデータを見ると、マメ類やイモ類では値が高く、葉物野菜や果物などは低い傾向があることがわかります。
ちなみに、土壌がセシウムに汚染された度合いに、この移行係数を掛け合わせれば、収穫の際の作物の汚染の可能性がわかります。例えば、土壌調査でセシウムが土1kgあたり5000Bq検出された畑では、収穫時のレタスは平均して1kgあたり5000×0.0067=33.5Bq吸い込んでいる可能性がある計算になります。
公表された係数は、海外の畑の地表10~20センチを対象としたデータのうち、日本に気候が近い国のものを集めたみたいです。日本の畑にそのまま当てはまるとは限りませんし、作物によっては係数のバラツキが大きいので判断に迷うものもありますが、一応の参考にはなりそうです。なお、詳細なデータは下記に示しますので興味のある方は参照してください。

2011年5月27日金曜日

福島の放射線許容量は安全か危険か?(補足)

先の福島汚染マップで気になったこと、つまり、この測定値が地表1mの値であることと、関東の一部に意外と放射線量の高い場所があることについてコメントします。

これまでの情報によると、放射線量は測定する高さで変わってくる事がわかってきました。特に地表に近くなるほど値が高くなる傾向があり、地面の近くでは地表数mの値より2~3倍も高くなる事があるみたいです。ということは、地面の近くで遊んだりする時間が多い子供の方が、大人より被曝量が多くなって危険ではないかと思えてきます。

拡大マップを見ると、関東の一部(千葉の柏、松戸、流山、三郷周辺)で割と放射線量の高い場所があることがわかります。

 これら4都市周辺では、福島のいわき、白河、会津若松周辺と同程度、つまり3.5~4mSV/年くらいの値です。これも地表1mのデータなので、地面の近くでは7~10mSVくらいになっている可能性はあります。大人でも単純に安全とは言い切れない値なので、福島の子供と同様の注意が必要ではないかと思います。


2011年5月23日月曜日

カリウムの基礎と豆知識

少々重い話題が続きましたので、この辺でブレイクタイムとして、先の投稿で取り上げたカリウムの基礎と豆知識を紹介します。
カリウムとセシウムの化学的性質が似ている(両者は同族元素)と書きましたが、もう少し具体的に言うと、どちらもプラスイオンになりやすいのです。

すべての元素は、中心に中性子と陽子(+)があり、その周りを同じ数の電子(-)が回っていて電気的には中性です。イメージしにくいかもしれませんので、陸上競技場のトラックに例えてみます。元素というのは、競技場中心の周りの幾つかのコーナーを、各コーナーごとに決まった数のランナー(最大8まで)が走っているようなものです。
カリウムは第4コーナーまでのトラックで、1~3コーナーまではランナーが詰まっているものの、最も外側の4コーナーはランナーが1人だけ走っているようなものです。この状態というのは、ランナー(電子)がコースから外れて消えてしまいやすいのです。すると、電気的に中性だったところで電子(-)が1個消えてしまうので、プラスイオンになりやすいというわけです。
セシウムは第6コーナーまでのトラックで、1~5コーナーまではランナーが詰まっているものの、最も外側の6コーナーはランナーが1人だけ走っているようなものなので、同じようなことが起きてプラスイオンになりやすいです。

ちなみに、カリウムというのはKaliumというドイツ語で、英語ではPotassium(ポタシューム)という全く異なる単語なので、英語を勉強されている方はお気をつけください。日本の化学用語はドイツから輸入されたため、そのままドイツ語読みしているものが多いです。

あと、ナトリウムもカリウムと同族元素なのでプラスイオンになりやすく、身近にあふれているので、生活上で役に立つ豆知識が多いです。

2011年5月20日金曜日

茶葉でセシウムが検出された理由と今後の対策

神奈川の茶葉(新ニュースでは茨城や栃木の茶葉も追加)に、基準値を超えるセシウムが検出された理由について、まだ十分ではないものの、これまでの信頼できそうな情報を元に考察してみます。結論から言うと、一部を除いて他の農産物での心配はあまりなさそうです(今回のお茶でも、長期間がぶ飲みしなければ心配ないレベルですが)。お茶の性質、セシウムとカリウムの関係が鍵で、具体的な理由を以下に示します。

●セシウムは茶葉の表面ではなく内部から検出されたらしいので、お茶の木が土中のセシウムを根から吸収して新芽にたまった可能性が高い。
これは科学的に十分あり得る話です。実は、お茶の木は土中のカリウムを根から吸収して新芽にたまりやすい事がわかっています。
そして、セシウムはカリウムと化学的性質が似ています(化学用語では、同族元素と呼ばれます)。カリウムよりセシウムの方が大きいので、豆で例えると、それぞれ小豆と大豆に相当します。
動植物の細胞は、大きさが多少違っていても化学的性質が似ている同族元素は誤って取り込んでしまうことがあります。そのため、お茶の木がカリウムと間違えてセシウムを取り込んでしまったのだと思われます。例え話では、小豆と間違えて大豆を口に入れてしまったようなものです。最後に、取り込まれたセシウムが新芽にたまって、濃縮されたわけです。

では、濃縮されやすい他の作物でも同じ事が起こるのでは?と思いますが、実際にチェルノブイリ事故後の研究では、天然キノコにセシウム濃縮作用が認められたと報告されています(室内人工栽培キノコには認められず)。よって、少なくとも天然キノコについては注意が必要でしょう。3月中旬の水素爆発以来これまでの所、大気中への大規模な放射性物質の放出はないため、新茶とキノコを除く農産物での心配はあまりなさそうです。より広範囲で継続的な検査をしないと断定はできませんが。

今後の対策についてですが、まだ決定的なものはありません。
福島では校庭の汚染土を地表から10センチ掘り起こすと放射性物質が三分の一以下に減少すると報告されていますが、取り除いた汚染土をどうするのかが問題となっています。
チェルノブイリ後の研究では、キノコによるセシウム吸収をカリウムが阻害すると報告されており、セシウムとカリウムの関係から考えられる化学的対策としては、とりあえず、
生産者側: カリウム豊富な肥料を使うなど。
消費者側: 普段からカリウム豊富な食生活をする。例えば野菜、果物、豆類、牛乳、お茶など。お茶にカリウムが多いのは、今回の説明が理由です♪

がすすめられます。他にも何か化学的対策があればお知らせします。

2011年5月17日火曜日

神奈川のお茶は安全か危険か?(補足)

先の投稿で、小田原のお茶について「お茶葉1kgを毎日体に取り込み続けると10日で0.10mSV、1年で3.7mSV(基準値は10日で0.065mSV、1年で2.4mSV)」と書きましたが、ここでのお茶葉1kgとは茶畑で収穫されたお茶葉1kgであって、実際に我々市民がお茶として飲む場合にどれくらいの量になるのかイメージがつかみにくいです。
そこで調べてみた結果、茶畑で収穫されたお茶葉1kgというのは、市販の茶製品にして200gに相当するみたいです。スーパーの茶製品を幾つか見たところ、標準では、茶製品4g(小さじ一杯分)を急須に入れてお湯130mlで抽出すると、湯飲み茶碗一杯分のお茶になります。これで計算すると、50杯分に相当する事になります。
つまり、小田原のお茶をもっとわかりやすく表現すると、「お茶を50杯、毎日飲み続けると10日で0.10mSV、1年で3.7mSV(基準値は10日で0.065mSV、1年で2.4mSV)被曝する可能性あり」となります。
しかし、いくらお茶好きな人でも50杯、毎日飲み続けることは滅多にないと思います。また、茶葉に含まれる放射性物質がすべてお湯で抽出されるわけでもありません(お湯の温度や抽出時間によっても左右される)。したがって、実際に体へ取り込まれる放射線量は、もっとずっと少なくなるはずです。

なお、茶葉にだけセシウムが検出された理由については、まだ信頼できるデータが少ないので今は触れないでおきます。もう少し情報がそろったらコメントしてみようと思っています。→5/20,コメントしました。

基準値を超えて検出された市町村は箱根や丹沢などの山脈近くが多いです。3月中旬の水素爆発で上空に大量放出されたセシウムなどが風に乗って運ばれてきて、高い山に遮られてふもとにたまっていった可能性が指摘されています。それが、3月下旬に降った雨で地上に降下してきて、土中に含まれるようになったと思われます。
箱根山脈の南西地域、つまり静岡以西や、神奈川より原発に近くても高い山がない場所では、基準値を超えるセシウムは検出されていないようです。福島でも原発に近くても高い山がない場所ではセシウム量は少なく、逆に遠くても山脈の近くでは多いという、同じような傾向が見られます。

2011年5月14日土曜日

神奈川のお茶は安全か危険か?: ベクレルとシーベルト(2)

福島から遠く離れた神奈川県のお茶葉から、基準値を超える放射性セシウムが検出されたことで、関東の農産物について衝撃と混乱が広がっています。政府や県は「お茶を飲んでも直ちに健康に影響はないが、念のため出荷の自粛を要請した」と、相変わらず安全なのか危険なのかわからない言い方をしています。これでは、「影響ないのになぜ出荷制限するのか?」「今は影響なくても将来危ないのでは?」と不安になりますよね。

ニュースによると、基準値500Bq/kgを超えるセシウムが南足柄市など数カ所で検出されたとのことです(570~780Bq/kg)。しかし、この値だけ見ても、体にどの程度の影響があるのか判断が付きません。そこで、以前に紹介した方法を使って、ベクレルからシーベルトへ変換してみます。

例えば、最も値の高かった小田原市のお茶葉(780Bq/kg)で計算してみます。このお茶葉1kを人体へ取り込んだ時の影響は、780Bq×0.000013=0.010mSVとなります。0.000013という数字は、セシウムに関してベクレルからシーベルトへ変換する係数で、以下から参照しました。
http://search.kankyo-hoshano.go.jp/food2/Yougo/j_senkeisu.html

もし、このお茶を10日体に取り込み続けたとすると、0.010mSV×10日=0.10mSVで、この程度なら安全と言えます。しかし、もしこのお茶を一年取り込み続けたとすると0.010mSV×365日=3.7mSVとなり、お茶だけで体に取り込む放射線量としてはやや多いので、単純に安全とは言い切れなくなってきます。

つまり、「科学的にはお茶を数日飲んだとしても健康に影響はないけど、市場に出ていると長期にわたって飲み続ける人がいるかもしれない。その結果、健康に影響が出てくる可能性はある」、ということになります。
ということで、政府・県の「直ちに健康に影響はないが、念のため出荷の自粛を要請」という方針は間違ってはいないと思います。しかし、一生懸命作った生産者の気持ちを考えると、画一的な出荷自粛ばかりでいいのだろうか?という気はします。例えば、「今回のお茶葉1kgを毎日体に取り込み続けると10日で0.10mSV、1年で3.7mSV(基準値は10日で0.065mSV、1年で2.4mSV)」と表示して、政府の責任において出荷を許可するなど、生産者に配慮した対応も必要なのではないでしょうか。。。

2011年5月10日火曜日

福島の放射線許容量は安全か危険か?

福島の放射線許容量について、20mSV/年という基準を巡っての混乱が広がっています。文部科学省、政府は妥当だと主張し、専門家は賛否両論。挙げ句の果てに、この値では高すぎると言って、内閣参与だった専門家が泣きながら辞任する始末・・・これでは、市民には安全なのか危険なのかさっぱりわからず、混乱するばかりですね。
とりあえず、現時点で信頼できる情報を元にして、考えてみます。重大な原発事故などの緊急事態を想定した場合の数値は、以下のように定まっています。

緊急時: 20~100mSV /年
収束時: 1~20mSV/年   

緊急時であれば20mSVは最も低い値なので、完全に安全なレベルです。しかし、この緊急時の値は、実は、事故発生から1~2週間(長くても1ヶ月)程度に限って適用されるものなので、事故が長期にわたった場合は収束時の値で考えないといけません。すると今度は、20mSVは最も高い値になるので、単純に安全とは言い切れなくなってきます。

ところで、レントゲン技師などの放射線従事者が浴びている放射線は約5mSV/年なので、このレベルまでなら安全と言えます。また、子供は大人より2~3倍放射線の影響を受けやすいと報告されています。
これらの情報を踏まえると、安全を最優先するなら、大人5mSV、子供1~2mSVと設定するのが理想的だと思います。
ただし、ここまで厳しく設定すると、誰も全く外出できなくなって当面の生活に支障が出る恐れはあります。この現実面を考えると、とりあえず20mSV/年と設定するのもあながち間違っているとは言えません。暫定的に設定して理想値まで下げていくという方針も理解できなくはないです。
ただし、上述のように子供は影響を受けやすいので、大人20mSVと設定するのであれば、子供は5~10mSVくらいに設定すべきだと思います。さらに、この値は期限付きで適用し、それを超えても事態が収束せずに放射線量が下がらないのであれば、生活より安全を優先して設定値を下げるか、思い切って子供だけでも学童疎開(?)みたいなことも必要になるかもしれません。

福島の放射能汚染マップによると、国が定めた避難区域以外でも、福島市、二本松市、郡山市を含む一帯の放射線量が結構高く、計算すると15~20mSV/年くらいになるのがわかります。ついで、いわき、白河、会津若松周辺が高く、3.5~4mSV/年くらいになります。
気になるのは、この測定値が地表1mの値であることと、関東の一部に意外と放射線量の高い場所があることです。これについては、後で別にコメントします。

2011年5月5日木曜日

放射線用語の基礎2

観測結果を元に、東京に住む人が一ヶ月(3・14~4.11)に浴びた放射線量が発表されました。
外部被曝量: 0.016mSV
内部被曝量: 0.1mSV
合計して0.116mSVなので、健康に影響を与えるレベルではありません。

さて、これまでは放射線を浴びることを、単に被曝と言ってきましたが、被曝には内部と外部の二種類ありますので、ここで整理してみます。
外部被曝は、レントゲン検査などで、体の外から放射線を浴びること。
内部被曝は、放射性物質を含む水や食料を飲食したり、放射性物質が付着したホコリを吸い込んだりして体内に取り込まれ、内部から浴びること。

内部被曝は体内から放射線を浴びるので、とても怖い印象を受けるかもしれません。ただし、病原菌やウイルスと違って、放射性物質は時間とともに体内で増えることはありません
また、放射性物質は時間とともに放射線を出す能力(=放射能)が減っていくので、むしろ時間とともに体内から減っていきます。ちなみに、放射能が半分になるまでの期間(=半減期)は、
ヨウ素が8日、セシウムが30年。セシウムは半減期がすごく長いのでびっくりするかもしれませんが、こんなに長期間体内に留まっているわけではありません。人体は汗や尿などで異物を対外へ排出する機能を持っていますので、体内に留まっている期間はもっとずっと短くなります。
体内で放射能が半分になるまでの期間(=生物学的半減期)は、ヨウ素が約7日、セシウムが約90日と言われています。

2011年5月3日火曜日

放射線の健康への影響: 発がんのしくみ

福島で、20mSV/年という基準が妥当かどうか問題になっていますね。前にも書いたとおり5~100mSV/年は、発がん危険性について詳細不明なので、この20mSVという値の妥当性については何ともいえません。実際に、専門家の間でも意見が割れているので、今はあまり触れないでおきます。ただ、子供の方が放射線の影響を強く受ける事は確かなので、大人と同じ基準にすることは好ましくないと思いますが。。。
ところで、今回のタイトル、放射線が体にがんを起こす仕組みについてですが、放射線が遺伝子DNAを攻撃して傷つけることが原因だと聞いたことがあるかもしれません(私も本格的に化学を学ぶ前は漠然とそのように思い込んでいました)。でも、厳密に言うと少し違います。
放射線を浴びると、体内の水(人の体は約60%が水分)が分解されて活性酸素が生じ、この活性酸素がDNAを攻撃して傷つけるということが化学的研究で証明されています。つまり、攻撃の主役は活性酸素で、放射線は脇役なのです。(活性酸素は老化の原因にもなっていてマスコミにもよく取り上げられるので、聞いたことある人も多いと思います。)

さらに近年の研究結果より、タバコなどに含まれる発がん物質も体内で活性酸素を発生させて、これがDNAを攻撃して傷つけるということがわかってきました。
つまり、放射線もタバコも発がんのしくみは基本的に同じなのです。

放射線が活性酸素を作る様子、これがDNAを攻撃する様子、少量の放射線では問題なくて大量だとなぜ危なくなるのか?などは、例え話を交えながら別の機会に取り上げてみようと思っています。

2011年4月28日木曜日

放射線用語の基礎

テレビや雑誌など見ていると、放射線、放射性物質、放射能が混同・誤用されていることが少なくありません。
放射線(レントゲン検査で被曝するX線など)を放出する物が放射性物質(ヨウ素やセシウムなど)、これが放射線を出す能力が放射能(ベクレルで表示)、放射能が半分になるまでの期間が半減期です。

冷凍食品の運搬時に使われるドライアイスで例えてみます。ドライアイスは二酸化炭素の固まりで、これの基礎は以下がわかりやすいです。
http://www.nihon-tansan.co.jp/kids/index.html
ドライアイスは二酸化炭素を放出するので、ドライアイスが放射性物質、二酸化炭素が放射線、二酸化炭素を出す能力が放射能に相当します。半減期は、ドライアイスが半分の大きさになるまでの時間、とイメージすればわかりやすいでしょう。

そういえば二酸化炭素と放射線、どちらも少量では問題なく大量に浴びると体に毒、どちらも無色・無臭で見えない・・・よく似ています。

ちなみに、ドライアイスは被災地でも活用されているみたいです。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110424/trd11042420550009-n1.htm

2011年4月27日水曜日

放射線を現す単位: ベクレルとシーベルト

放射線の話をわかりにくくしている原因の一つに、ベクレル(Bq)とシーベルト(SV)という二つの単位にあります。
おおざっぱに言うと、Bqは「放射性物質(ヨウ素、セシウムなど)が放射線を発する能力=放射能」を現す単位、SVは「放射性物質に曝された時の放射線による人体への影響」を現す単位です。
お酒の例え話では、Bqがお酒自体のアルコール度数、SVがお酒を飲んだ時のアルコールによる人体への影響を現す単位に相当します。

一般市民が最も知りたいのは、放射線による人体への影響ですからSVなんですが、各マスメディアでは”水や農産物から○○Bq検出された”とよく報道されます。なので、BqからSVへ変換できると便利ですね。今回は、その変換法を紹介します。

例えば、300Bqの放射性ヨウ素が検出された水を1kg飲んだとき(300Bq/kg)の人体への影響は、300Bq×0.000022=0.0066mSVとなります。
0.000022という数字は、ヨウ素に関してベクレルからシーベルトへ変換する係数で、以下から参照しました。ヨウ素以外の放射性物質の変換係数もここに載っています。
http://search.kankyo-hoshano.go.jp/food2/Yougo/j_senkeisu.html

放射線の健康への影響: 発がんとの関係

放射線を浴びた場合に、健康への影響で最も気になるのはがんだと思います。
広島・長崎の被爆者(数万人)の発がん性を長年追跡調査した研究がありますので、この結果をかいつまんで紹介します。
●200mSVの放射線を浴びた場合、
(被爆していない場合に比べて)がんになる危険性が1.1倍に増加した。

例)30~70歳でがんになる可能性は約30%なので、もしこの年齢層で200mSVの放射線を浴びた場合はその可能性が33%になる計算(つまり、3%の上昇)になります。おおざっぱにまとめると、200mSV以上放射線を浴びた場合、がんになる危険性は3%以上増加する、と言えます。

では100mSVでは1.5%増加するのか?と言う疑問は生じますが、年間に100mSVの放射線を浴びると(100mSV/年)、がんになる危険性は0.5%上昇する、というのが医学的な定説みたいです。

放射線被曝については、自然界からの放射線(日本1.5mSV/年、世界平均2.4mSV/年)に加えて、健康診断などでレントゲンやCT検査による放射線を浴びています(医療被曝と呼ばれます)。この医療被曝が日本は平均2.3mSV/年(世界平均0.6mSV/年)あります。つまり、自然被爆と医療被曝を合計すると、多くの人が一般に3~4mSV/年の放射線を浴びている計算になります。これ以外の放射線は1mSV以下にするのが望ましいと言われています。これらの情報を踏まえると、5mSV/年以下であれば放射線を浴びても、がんになる危険性は上昇しないと言えます。以上まとめると、年間に

100mSV以上は危険(発がん性上昇する:100mSV:0.5%、200mSV:3%)
5~100mSVは詳細不明(発がん性:0~0.5%)

5mSV以下は安全(発がん性上昇しない)

2011年4月26日火曜日

放射線の健康への影響

放射線と健康の関係ですが、どういう説明をしたかわかりやすいかいろいろ考えた結果、お酒の健康傷害を例えにしてみます。

お酒を少量飲んでも問題なくて限界量超えて飲むと、急性アルコール傷害や慢性アルコール傷害が現れる事はよく知られていますよね。
実は、放射線も少量なら被爆しても問題なくて限界量超えて被爆すると、急性の傷害や慢性の傷害が現れるのです。なので、限界量がどの程度かを知っておくと、むやみに恐れることはなくなります。信頼できるデータを以下に紹介します。単位は”mSV(ミリシーベルト)”
          
急性の傷害(吐き気や倦怠感)
国際基準は400-500mSV(日本は100-250mSV)/h
つまり、1時間に100-250mSV以上の放射線を浴びれば傷害が現れる可能性高いですが、これ以下なら大丈夫です。

慢性の傷害(がんや白血病)
(例)500mSVの放射線を浴びると、2ー20年後に1000人中2人が白血病になったデータがあるので、500mSVで白血病になる確率は0.2%といえそうです。がんについては、次の機会で紹介します。

2011年4月24日日曜日

放射性物質を除く効果のある浄水器

原発問題が深刻化してから放射線詐欺という悪質な行為が報告されています。
例えば、体に取り込んだ放射性物質を解毒するという健康食品、サプリメント、医薬品。空気や水中の放射性物質を除くという清浄器、浄水器。国民の不安な心情につけ込んで、これらの商品を高額な値段で売りつけているそうです。これらはほとんどが効果のないインチキ商品ですが、中には科学的に効果が実証されたものもあります。まずは災害時用浄水器を紹介します。

汚染水をこの浄水器に通すと放射性ヨウ素、セシウムが検出されなくなったと言う実験結果がTV番組「ガイアの夜明け」で紹介されていましたので、確かに放射性物質を濾過して除く性能がありそうです。ちなみに番組中での報告では、
         汚染水          浄水器処理後
ヨウ素     約530Bq/L                  不検出
セシウム          約13Bq/L         不検出 

ただ、本体価格が25~30万円+設置代が約3万円で浄水器としては高額なので、個人での購入はためらわれますね。でも、安心・安全を最優先したい場所(医療機関など)では導入を検討するに値します。現在、メーカーへ直接ネットかFaxでのみ注文できます。

http://www.nmt.or.jp/goods_katei/index.html
http://www.nmt.or.jp/index.html

ちなみに、番組中に登場したのはCV-105JA,205JAで、被災地周辺の病院や保育園にも提供されていました。