2011年5月20日金曜日

茶葉でセシウムが検出された理由と今後の対策

神奈川の茶葉(新ニュースでは茨城や栃木の茶葉も追加)に、基準値を超えるセシウムが検出された理由について、まだ十分ではないものの、これまでの信頼できそうな情報を元に考察してみます。結論から言うと、一部を除いて他の農産物での心配はあまりなさそうです(今回のお茶でも、長期間がぶ飲みしなければ心配ないレベルですが)。お茶の性質、セシウムとカリウムの関係が鍵で、具体的な理由を以下に示します。

●セシウムは茶葉の表面ではなく内部から検出されたらしいので、お茶の木が土中のセシウムを根から吸収して新芽にたまった可能性が高い。
これは科学的に十分あり得る話です。実は、お茶の木は土中のカリウムを根から吸収して新芽にたまりやすい事がわかっています。
そして、セシウムはカリウムと化学的性質が似ています(化学用語では、同族元素と呼ばれます)。カリウムよりセシウムの方が大きいので、豆で例えると、それぞれ小豆と大豆に相当します。
動植物の細胞は、大きさが多少違っていても化学的性質が似ている同族元素は誤って取り込んでしまうことがあります。そのため、お茶の木がカリウムと間違えてセシウムを取り込んでしまったのだと思われます。例え話では、小豆と間違えて大豆を口に入れてしまったようなものです。最後に、取り込まれたセシウムが新芽にたまって、濃縮されたわけです。

では、濃縮されやすい他の作物でも同じ事が起こるのでは?と思いますが、実際にチェルノブイリ事故後の研究では、天然キノコにセシウム濃縮作用が認められたと報告されています(室内人工栽培キノコには認められず)。よって、少なくとも天然キノコについては注意が必要でしょう。3月中旬の水素爆発以来これまでの所、大気中への大規模な放射性物質の放出はないため、新茶とキノコを除く農産物での心配はあまりなさそうです。より広範囲で継続的な検査をしないと断定はできませんが。

今後の対策についてですが、まだ決定的なものはありません。
福島では校庭の汚染土を地表から10センチ掘り起こすと放射性物質が三分の一以下に減少すると報告されていますが、取り除いた汚染土をどうするのかが問題となっています。
チェルノブイリ後の研究では、キノコによるセシウム吸収をカリウムが阻害すると報告されており、セシウムとカリウムの関係から考えられる化学的対策としては、とりあえず、
生産者側: カリウム豊富な肥料を使うなど。
消費者側: 普段からカリウム豊富な食生活をする。例えば野菜、果物、豆類、牛乳、お茶など。お茶にカリウムが多いのは、今回の説明が理由です♪

がすすめられます。他にも何か化学的対策があればお知らせします。

2011年5月17日火曜日

神奈川のお茶は安全か危険か?(補足)

先の投稿で、小田原のお茶について「お茶葉1kgを毎日体に取り込み続けると10日で0.10mSV、1年で3.7mSV(基準値は10日で0.065mSV、1年で2.4mSV)」と書きましたが、ここでのお茶葉1kgとは茶畑で収穫されたお茶葉1kgであって、実際に我々市民がお茶として飲む場合にどれくらいの量になるのかイメージがつかみにくいです。
そこで調べてみた結果、茶畑で収穫されたお茶葉1kgというのは、市販の茶製品にして200gに相当するみたいです。スーパーの茶製品を幾つか見たところ、標準では、茶製品4g(小さじ一杯分)を急須に入れてお湯130mlで抽出すると、湯飲み茶碗一杯分のお茶になります。これで計算すると、50杯分に相当する事になります。
つまり、小田原のお茶をもっとわかりやすく表現すると、「お茶を50杯、毎日飲み続けると10日で0.10mSV、1年で3.7mSV(基準値は10日で0.065mSV、1年で2.4mSV)被曝する可能性あり」となります。
しかし、いくらお茶好きな人でも50杯、毎日飲み続けることは滅多にないと思います。また、茶葉に含まれる放射性物質がすべてお湯で抽出されるわけでもありません(お湯の温度や抽出時間によっても左右される)。したがって、実際に体へ取り込まれる放射線量は、もっとずっと少なくなるはずです。

なお、茶葉にだけセシウムが検出された理由については、まだ信頼できるデータが少ないので今は触れないでおきます。もう少し情報がそろったらコメントしてみようと思っています。→5/20,コメントしました。

基準値を超えて検出された市町村は箱根や丹沢などの山脈近くが多いです。3月中旬の水素爆発で上空に大量放出されたセシウムなどが風に乗って運ばれてきて、高い山に遮られてふもとにたまっていった可能性が指摘されています。それが、3月下旬に降った雨で地上に降下してきて、土中に含まれるようになったと思われます。
箱根山脈の南西地域、つまり静岡以西や、神奈川より原発に近くても高い山がない場所では、基準値を超えるセシウムは検出されていないようです。福島でも原発に近くても高い山がない場所ではセシウム量は少なく、逆に遠くても山脈の近くでは多いという、同じような傾向が見られます。