ごあいさつ2(専門家とは?)

先のごあいさつで、専門家の守備範囲が狭いことを、お酒の専門家にたとえて書きましたが、今回の大震災に関連する分野についてもう少し具体的にいえば、以下のようになります。これだけの大災害・事故になると、多分野にまたがる専門知識がないと、適切な分析・解説はできません。ところが、現状は逆のようでして・・・
原子力関係の専門家のコメントによると、地震を研究する人、津波を研究する人、防災を研究する人、原子炉・原発を研究する人、放射性物質の拡散・蓄積を研究する人、放射線の健康被害を研究する人、などはそれぞれ別々に活動していて、お互いに交流することは少ないみたいです。

実は私のいる化学の世界も、有機化学、無機化学、生化学、電気化学、分析化学、物理化学、高分子化学などに細かく分かれていて、専門家はそれぞれ別々に活動していて、お互いに交流することは少ないので、上のコメントは真実でしょう。

ちなみに愛読している「逆説の日本史」という本によると、歴史学の世界はもっとひどく、例えば織田信長を研究している人、豊臣秀吉を研究している人は別々に活動しており、お互いに交流することも少ないと指摘されていて、びっくりしました。
歴史学の話は極端としても、日本における専門家の現状は、”自分の研究している分野の狭い範囲の知識は豊富(かもしれない)。しかし、他分野の事は関心が薄くて???である人が少なくない”、と言えます。

今回の震災を機に、様々な分野の専門家を集めて近未来の対策を考えるべきだと言う指摘がなされていますが、うまく機能するかどうかは疑問です。専門家の守備範囲が狭い状態、つまり視野の狭い人々の集団では、お互いのコミュニケーションが円滑に進むとは限らないです。また、対策を考え出しても政治家や市民へ上手に説明できるか不安が残ります。短期的には、異分野共同研究に慣れた人にリーダーとなってもらい、中長期的には、幅広い視野を持った科学人材を多く育成していく事が今後の課題といえるでしょう。