2011年5月5日木曜日

放射線用語の基礎2

観測結果を元に、東京に住む人が一ヶ月(3・14~4.11)に浴びた放射線量が発表されました。
外部被曝量: 0.016mSV
内部被曝量: 0.1mSV
合計して0.116mSVなので、健康に影響を与えるレベルではありません。

さて、これまでは放射線を浴びることを、単に被曝と言ってきましたが、被曝には内部と外部の二種類ありますので、ここで整理してみます。
外部被曝は、レントゲン検査などで、体の外から放射線を浴びること。
内部被曝は、放射性物質を含む水や食料を飲食したり、放射性物質が付着したホコリを吸い込んだりして体内に取り込まれ、内部から浴びること。

内部被曝は体内から放射線を浴びるので、とても怖い印象を受けるかもしれません。ただし、病原菌やウイルスと違って、放射性物質は時間とともに体内で増えることはありません
また、放射性物質は時間とともに放射線を出す能力(=放射能)が減っていくので、むしろ時間とともに体内から減っていきます。ちなみに、放射能が半分になるまでの期間(=半減期)は、
ヨウ素が8日、セシウムが30年。セシウムは半減期がすごく長いのでびっくりするかもしれませんが、こんなに長期間体内に留まっているわけではありません。人体は汗や尿などで異物を対外へ排出する機能を持っていますので、体内に留まっている期間はもっとずっと短くなります。
体内で放射能が半分になるまでの期間(=生物学的半減期)は、ヨウ素が約7日、セシウムが約90日と言われています。

2011年5月3日火曜日

放射線の健康への影響: 発がんのしくみ

福島で、20mSV/年という基準が妥当かどうか問題になっていますね。前にも書いたとおり5~100mSV/年は、発がん危険性について詳細不明なので、この20mSVという値の妥当性については何ともいえません。実際に、専門家の間でも意見が割れているので、今はあまり触れないでおきます。ただ、子供の方が放射線の影響を強く受ける事は確かなので、大人と同じ基準にすることは好ましくないと思いますが。。。
ところで、今回のタイトル、放射線が体にがんを起こす仕組みについてですが、放射線が遺伝子DNAを攻撃して傷つけることが原因だと聞いたことがあるかもしれません(私も本格的に化学を学ぶ前は漠然とそのように思い込んでいました)。でも、厳密に言うと少し違います。
放射線を浴びると、体内の水(人の体は約60%が水分)が分解されて活性酸素が生じ、この活性酸素がDNAを攻撃して傷つけるということが化学的研究で証明されています。つまり、攻撃の主役は活性酸素で、放射線は脇役なのです。(活性酸素は老化の原因にもなっていてマスコミにもよく取り上げられるので、聞いたことある人も多いと思います。)

さらに近年の研究結果より、タバコなどに含まれる発がん物質も体内で活性酸素を発生させて、これがDNAを攻撃して傷つけるということがわかってきました。
つまり、放射線もタバコも発がんのしくみは基本的に同じなのです。

放射線が活性酸素を作る様子、これがDNAを攻撃する様子、少量の放射線では問題なくて大量だとなぜ危なくなるのか?などは、例え話を交えながら別の機会に取り上げてみようと思っています。